~北九州市立大学ひびきのキャンパスの学生が、北九州市を拠点に活躍されている企業様にインタビューを行い、企業の事業内容や魅力をまとめた取材記事を作成しました~

私たちが取材しました📝✨
【話し手📢】株式会社戸畑製作所 技術部 永安克志さん
【聞き手🎤】北九州市立大学 国際環境工学部3年:E・Tさん、K・Rさん、S・Wさん

企業プロフィール🏢✨
 戸畑製作所は、北九州市南区新曽根にある本社がある株式会社です。また営業所は千葉県、熊本県に支店があります。資本金は3,500万円、従業員は約130名です。戸畑製作所は昭和23年(1948年)に戸畑で銅合金鋳造加工の専門メーカーとして創業し、国内をはじめ世界の鉄鋼メーカー向け高炉用・電気炉用銅製品を製造しています。社訓は「一、健全且つ明確であれ 一、対応を迅速に 一、厳しい現状認識から変革を目指せ」、2024年経営方針は「凡事徹底」です。
 戸畑製作所の売り上げは銅関連製品がほとんどを占めていますが、近年では難燃性マグネシウム合金の開発に注力し、新しいニーズにも対応しています。マグネシウムは実用金属において最も軽く、比強度が高いなどの金属としての性質が優れているため、様々な分野での用途拡大が期待されています。しかし、マグネシウム合金は非常に燃えやすい性質を持っています。難燃性マグネシウム合金はこの燃えやすいという問題点を改良した画期的な軽金属材料です。この合金は構造材料として新幹線の内装部材として実用化されています。また、この合金は製造時に不活性ガス(SF6:温暖化係数がCO2の23900倍)が不要であり、リサイクル性にも優れています。そのため、製造時から使用後まで環境に優しい合金となります。
 戸畑製作所の強みは長年積み重ねてきた信頼と技術です。これにより、取引先に鉄鋼業界の大手企業が多く、事業基盤が安定しています。また、顧客のニーズに合わせた新技術の開発も強みです。

小倉南区にある本社屋
構内での鋳造作業工程

質問1】現場で作業するにあたって一番気を付けていることはなんでしょうか?
 金属産業という性質上、頭部の確保が何よりも重要です。当然のことながらヘルメットの着用、さらに怪我の防止と作業進行確認も兼ねて指差し呼称も行っています。製品を提供する上で製品自体の性能だけでなく、安全な現場で生産することも顧客の安心感を生むことになり、従業員を守る意味では必要なことです。

質問2】2050年までに温室効果ガスの排出を実質0にするという日本の動きに対して、企業としてどれほどの影響がありましたか?
 一般的に高炉内に鉄鉱石と共にコークスを流し込むため、銑鉄を得る副産物として二酸化炭素が発生していました。そのため、今後は高炉内にコークスの代わりに水素を吹き込むことで二酸化炭素の発生を無くそうという動きがあります。戸畑製作所はこのような変化に対応するため、高炉用銅製品の設計を進めています。また、マグネシウム合金が溶解時に大気と触れると激しく燃えるため、カバーガスで空気を遮断する必要があります。一方、難燃性マグネシウム合金の場合は、このような心配がないため、カバーガス量を減らすことができて非常に環境にも優しいといえます。以上の理由により企業として影響はありましたが、心配な点はありません。

質問3】世界初の技術や試みなど、新分野で活躍している理由はなんですか?
 主に顧客からの要望に応えた結果です。ニーズの9割が純銅製品であり、その中で新しい試みが多くあったため、特許を取得できたりしています。一方で、難燃性マグネシウム合金は、企業としても売り出していきたいものであり、期待値は大きいと考えます。ニーズとシーズのバランスを意識しながら、経営戦略を練っています。

質問4】1日のお仕事の流れを教えてください
 工場勤務の方は基本的に一日中製造をしています。技術分野の方は主に研究と設計をしており、1日の内でどちらか一方しかやらないことが多いです。研究内容は、マグネシウム合金が多く、設計はCADを用いて行っています。その他にも営業分野の方はセールス活動を主体とした仕事内容です。また、年間休日を8日増やしたりすることで、残業イメージが強い負の部分を補っています。

質問5】戸畑製作所で得られるスキルなどはなんですか?
 主に機械を扱うため、実践的な技術面での向上は大きいです。また銅製品などは複雑な形状をしていることが多いため、PC解析などのコンピュータ関連の技術の向上が期待できます。さらに難燃性マグネシウム合金のように非鉄金属分野での強みもあるため、そのような研究スキルは切磋琢磨していける環境にあります。このように鋳造や接合に使う機械や、解析に使うコンピュータ操作、研究遂行能力の向上が主に得られるスキルです。

質問6】今後の展望として、新分野での市場シェア率を伸ばしていくのか、既存の市場での競合に力を入れていくのでしょうか?
 企業の一番の強みとしての「銅」をもっと売り出していきます。具体的には、海外進出などでシェア率の拡大を狙っていきたいです。また企業の利益のほとんどが銅であるため、難燃性マグネシウム合金を用いた新製品の開発や、従来の他金属類で作られた製品を難燃性マグネシウム合金を用いて製造することで、火災防止など環境にやさしいものづくりへの期待が大きいことから力を入れていきたいです。また、新幹線の荷台だけでなく、他の輸送機器関連に難燃性マグネシウム合金を使用することも期待できると考えています。

学生インタビュワーの編集後記 ~お話をお伺いした感想~✨
 年内も残りわずかとなりお忙しい中、今回は戸畑製作所の技術部の方々と座談会をさせていただきました。我々のつたない進行にも関わらず、一つ一つの質問に丁寧に答えていただき、職場の雰囲気は「穏やか」と仰っていた通りの和やかな雰囲気で楽しい座談会となりました。
 最後になりましたが、今回お越しいただきました戸畑製作所の方々にお礼申し上げます。

株式会社戸畑製作所の方々と取材班